邦画だって、この才能と完成度「ちょっと思い出しただけ」はボディーブローのように。やっぱ買うなら小型株だな。

テアトルの配給で、
しがらみから、キャストやシナリオが歪められることもない。
作り手の志が伝わる映画。
悶絶するもよし、あとからジワジワ効くもよし。
 
独立系の小さなところなら、国内にも良質なサービスはまだまだあり。
一方で、
既得権に守られ肥大化した産業は、内向きで劣化してても急には滅びない。
日本はなまじ国内マーケットが大きく、韓国のスピード感はない。
日本の意思決定は二極化しています。
 
下落局面では、小型株のトップダウンの経営を買いたい今日このごろ。
邦画にも映画館に足運ぶ価値ある作品は普通にあります。

   
なにはともあれ、
ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」を観て、
”夜にしがみついて、朝で溶かして” からの「ちょっと思い出しただけ」
このワードセンスは控えめにいって天才ですね。

  
松居大悟監督はしっかりと「フリ」→「オチ」を利かし、
シナリオも画作りも、完成度高い作品に仕上がってます。 

できれば「パターソン」もですが、
ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」は予習した方がより楽しめますね。
本作は、
オマージュも、オフビートな会話も、機能していますので、
単に恋愛映画としても楽しめますけど、ジャームッシュ味で好み分かれるかもしれない。
予習しておくと雰囲気や会話で戸惑わないし。物語に入りやすいと思う。 

キャストも素晴らしいです。
池松壮亮の達観した空気感も良いのですが、なんと言っても、
伊藤沙莉は令和の大竹しのぶですね。浅草氏もこんな風に大人になるのかな。 
 
 
情熱や才能は、枯れる前に発揮しないとな。
そんなことも、思いました。
なにより、  
東映と松竹のせいで、邦画が全否定されるのは反論しておきたい。
(ついでに、昔の三木聡はセンス良い笑いだったことも)
 
 
お話の構造は、若干ネタバレしますが、
時間逆行が分るとか分からないとかは不毛なので、
 池松壮亮役の(元)ダンサーの誕生日、その一日を毎年遡って、
 二人の別れから出会いまでをコロンボのような倒叙型で描く。
ちゃんと前フリしてるので、ここで混乱するのは勿体無い。
一日一日を連続して描くのは、「パターソン」から借りて、
ノーランみたいな松居大悟監督の才能が乗ります。
 
 何故別れたんだろう?
 どんな風に付き合ってたんだろう?
 どっちが告白したのかな?
 どんなきっかけで出会ったのだろう?
 
そこに順々に興味を惹かれて、
ああ、そうだったんだ、、
映画の追体験をしながら、自分の経験も思い出す。
そんな作りになっています。
 
構成と演出と画作りの完成度高いし、
ずるいなー。そんな泣かせ方は。
エンドロールで主題歌が掛かります。
 
ジャームッシュのような、淡々とした日常系が嫌いでなければ、
二時間堪能します。
 
 
 
個人的に一番興味引いたのは、別れ方でした。
 気持ちは分るけど、アスリートの進退なんて本人の決断なんだから、
 そこは、待ってあげるしかないよ。ほっといてあげなよ。
達観した池松壮亮の方に同情してしまった。
あそこは説明セリフになっても止むないところ、際どく回避してる。

これは、、同じ方向を向いて、やって行けそうにはないか。。
まあ、無理って決定的に思うときって、こんなだよね。
どちらが悪いって訳じゃなく。 
 
一日分のエピソード、それぞれの納得感が高くて、
だからこそ、自分の体験連想することになる。巧みですね。
淀みなく矛盾が無い。神経が行き届いている。
 
確かに残念ながら、
邦画で、それが出来てない設定や脚本は多い。 
さがす」はとても惜しい。
そういった意味でも「音量を上げろタコ」では、三木聡の才能の枯渇を痛感しました。
 
製作委員会の思惑で歪む場合は多く、
また、体力無くなると推敲に耐えられず雑に。黒澤明ですら。
 
そんな邦画ばかりじゃないんだよ。
って、言えてよかった。せっかく日本に居るのだもの。
特に単館系の映画は、東京に居ないと。
 
 
まあ、映画は追体験と、自分のことちょっと思い出すものですね。 
ジャームッシュの「ナイト・オン・ザ・プラネット」予習すると、
LA編
 大柄で太った白人女性が成田からの高速バスで横柄な態度で、
 ちゃんと喧嘩しとけばよかったと後悔があります。
 ジーナ・ローランズ観てて、それ思い出してムカつきました。

NY編
 運転手さんと片言で会話するの、あんな感じですね。
 リキシャのが本気で故障して、1時間くらい待ったな。
 日本では、交渉したり、喧嘩したりは、しないものね。
 知らない街で夜の移動は極力避けますが、
 その時間にバスが到着してしまったものは仕方ない。
  ターミナルからタクシー拾って安宿街まで。
  なかなか部屋なくて、
  日本で暮らしたことあるバングラデシュ人に助けてもらった。
 ちょっとリスクテイクだけど、新しい街にワクワクしてる。
 NY編が一番好きです。
 
パリ編
 東京には川が無いとベトナム人に言われた。
 いや、暗渠なんだよ。伝わる言い換えがとっさに思いつかなかった。
 頼まれもしないのに、余計な親切しすぎたかな。
 
ローマ編
 親戚の葬式に出席して、
 式の最中以外は、ずーっと喋っていた叔父さん。
 内容は特に無い。会話が成立しようがしまいがお構いなし。
 元母がああなのは、遺伝だな。
 
ヘルシンキ編
 気のいいようで、ゲスで無慈悲な二人。
 日本のワイドショーみたい。
 ジャームッシュ味で、シニカルでも可笑しみ溢れる演出だけど、
 今、日本で暮らしてる感が、胸に迫る。
 もうすぐ、夜が明けるといいな。
 
  
映画を観るってこと自体が、ちょっと思い出しただけ。

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