予習を済ませ、観てきました。
鑑賞後は最初に、マーケティング視点の感想が浮かびました。
作り手の顧客理解度が高いから、圧倒的に満足度も高い。
ヒットメーカー相手に恐縮ですが、感動というより感心してました。
私個人も楽しめましたよ。
絶賛とまでは行きませんが、完成度上げた良作と思いました。
顧客満足度の高さという意味では傑作でしょうね。
でも、それじゃ、
”分からないから駄作”の正バージョンで、評価が主観的過ぎる。
確かに、
映像、演技、特殊効果、衣装、美術、音楽の良きに加え、
黄金コンビの脚本と演出も絶妙な匙加減。
(過剰気味な説明に、私は胃もたれしますが、それは後述)
ですが、
突出して優れるというよりも、よくまとまっているという印象。
タイムスリップ中のエピソードの取捨選択に、
顧客満足度を上げるため、脚本家の苦心が忍ばれます。
それでも、
傑作と呼ばない理由を挙げれば、
第一の関門をクリアしきれてないこと。
初対面でストーカーっぽい15も年上の女性に対し、
青年が恋に落ちる説得力が弱い。
視点の転換という程でもなく、
全般的に、
松村北斗演じる人物に対しての、作り手からの扱いが、若干気になりました。
愛されたい松たか子に自己投影する観客を愛する装置。
に見えてしまった。
オタクと出世に気を使う気質は両立するのかな。
後者なら吉岡里帆でいいじゃん。
未来の松たか子のドコに惚れたのか描いて欲しい。
夫婦円満は、お互いの努力でなく、夫の一方的頑張りで成るのか、
あれだと、愛されたいを満たす装置っぽく見えちゃう。
描く以上は、心掛けの変化を丁寧に描くべき。結果は見せずとも。
夫の稼ぎがメインで、あの生活なら、もっと忙しいと思う。
家庭の生活感を脱臭し過ぎかなぁ。トレンディドラマみたい。
そして一般的な仕事に対して、脚本家の偏見が強すぎる気がする。
しかし逆に、
夫の人物造形を深堀りするよりも、
妻がどう愛し、愛されるのかに尺を割く方が、
顧客満足度は高い。
と、計算出来ている気もします。
ま、あとは、
説明セリフがキツイという当然予想されたこと、
くらいなんですけどね不満なのは。
辛いですが、これが現在の最適化なんだと理解してました。
最初と最後、餃子で揃えて綺麗。ですが、
初手、餃子の代引き現金払いのシーンで、
え、玄関でそれ言うんだ! 驚愕。途中退出も覚悟しました。
開封し、調理時に、”3年待った” と独り言で処理するだろ、せめて。
最後も、餃子先払い済で受け取って、
”夫が注文した” ってセリフで言っちゃうんだ。
余韻が台無しにならないかと、ハラハラしました。
現代の吉岡里帆が松たか子をなじるシーンでも、
言動が非常識と憤慨する向きも分かりますが、
いやいや、ここまでの経緯を客に説明してんだよ。
それ言い出すとキリが無いから、大目に見よう。
そういうターゲティングなんだ。と諭したくなりますが、
坂元裕二のリアリティラインと割り切って観ないとキツイはキツイ。
解釈を許さない不退転の決意の脚本家によるセリフで始まり、
映像もどうかと、身構えましたが、
塚原監督と四宮撮影監督の功績は大きく、映画らしい画作りを堪能しました。
では、
擁護と褒めを。
SF設定は破綻していない。と思う。
設定は以下を想定。
現在の肉体と精神で過去にタイムスリップする。
世界線は一つ、戻るときは肉体と精神一緒で、タイムスリップ直後の現在へ。
過去の自分も存在し、接触すると自分が消滅。D4Cの世界。
小さな影響は容易だが、運命を変えるには、大きな変更を要する。
タイムスリップが起こるのは、餃子後の夜中の呼び出し以降。
ラストの餃子時点では、まだタイムスリップが発生していない。
よって、
その時点では、タイムスリップ前の松たか子しか存在し得ない。
手紙を読んで、初めて全容を理解した。で問題無い。
運命という絶対には勝てなかったが、対策は無かったのか?
停止ボタンを押すシーンが実際に有り、
同様に、様々な対策を過去で示唆し、しかし未来は失敗する。
このシーケンスを複数描くことで、対策の抜け道を塞ぎ、
納得しない観客を黙らせることは可能。
ただし、それが尺を占めると違うジャンルの作品になる。
そこは ”運命は予め決定されている” でいいと思う。7部じゃなく6部で。
なお、
人生は止まらない列車で、線路を走り駅に到着する。
自分ではコースも目的地も変えられない。
そんなメタファーで、「怪物」の「銀河鉄道の夜」という訳じゃない。はず。
覚悟ガンギマリで飛び込んだのだから、一点の悔い無し。
で、タイムスリップのエピソード選び。
一番腐心したと思われる。
アイデアは幾らでも思いつくことでしょう。
選択は、
一発だけ、運命回避ネタ(=緊急ボタン)入れて、
残りは全てデートで、若き夫にトキメク乙女。
ギャグもやるけど、やり過ぎない。
冷え切った夫婦関係の後もう一度、愛し愛される妻をメインに描きたい。
テーマであり、一番のファンタジー。「花束」と「まめ夫」のフュージョン。
ここの手数を増やして、他はチャッチャと済ませたい。
当然とはいえ、
坂元裕二ブランドに集まる欲求を最大限満たしている。
愛して、かつ愛されたい。報われたい。大切にされたい。
という欲求。孤独でも自由が欲しいとか今の日本で流行らない。
脚本上の技工だけなら、もっと凄いの世の中にいっぱい。
しかし他のクリエータには無い強みを持つ。
顧客理解の解像度が高いので、顧客満足を最大化できる。
実は技工よりも理解力。
苦手なことに変わりはないけれど、その聡明さには圧倒されました。
参考文献
「買う前に欲しいと思わせる力」を「買って良かったと思わせる力」が上回った時に、「ブランドへの信頼」が発生します。
-中略-
自社プロダクトの「消費者の便益÷消費者のコスト」が競合プロダクトの「消費者の便益÷消費者のコスト」を上回っている際に、自社プロダクトを買う前に「欲しいと思わせる力」が発動されます。ここが高まらなければ、すべての認知施策はブランド側のエゴと言っても過言ではありません。
そして、自社プロダクトを購入前から使用中、使用後まで通じたすべての体験が、購入前の期待値を超え、代替競合の使用体験を超えている際に、「買って良かったと思わせる力」が発動します。
まさに坂元裕二ブランドのこと。
更に、
「まめ夫」配信により顧客データが穫れるのは大きいと思われ。
昨今TV発の映画が外れ少なく、製作者委員会の問題をクリアしてるとしたら、
直接的で有効な顧客データが入手可能になったことに依る。
顧客中心のアプローチによる迅速な意思決定を可能にするために、まず顧客のニーズやフィードバックに基づいて戦略を立案します。仮説に仮説を重ねるような過度な慎重さは避けられます。顧客からの直接のデータや声に基づいて迅速に意思決定するため、計画段階が短縮され、実行に移るまでのスピードが格段に向上します。
本作の優位性も考えてしまいます。
状況:愛し愛されている満足が不充分
便益:主人公に自己投影し満たされる
代替手段による未充足なニーズ:以下↓に分割
映画以外のメディア:集中的に没入出来ない
他の作品:解釈を観客に委ねたり、他の要素も混ぜる
瞬間的な優位性:純度高く高品位で欲しいものだけ提供。
その「状況」で求めている「便益」と「代替手段による未充足なニーズ」にも焦点を当て、消費者のニーズに対して自社の商品を最適な選択肢として提示し、購入を促すのです。
大ヒットにはきっと理由がありますね。
自由な解釈は許さないかんな、かんな、かんな、チュミミ~ン
ここぞというときはセリフ使わず、表情だけで演技する松たか子。
必殺技で正しい観客は必ずダウン。
2025.02.25 00:00現在
149円割れるか、株安も走る。
日本時間でも強い反発は出来そうにない。
トランプ政権の中国制裁でリスクオフと見える。
とはいえ、反発しそうなら現物買いたい。チキンに利確もする予定。