ドラマ性を削ぎ落とした情熱の100分! 劇場アニメ「ひゃくえむ。」 アニソン「らしさ」全開のストレートなパワーコード♪ 早熟vs晩成は「武井壮切り抜き」「為末大学」に教わる。 ちょっと思い出す「神々の山嶺」。

私は熱量に圧倒されました。

概ね高評価のようですが、
不満が残る原作ファンの評も見かけました。
それはそれで、故ある事と推察します。
 
1クール12話の連続ものであれば、原作に忠実なアニメ化に成ることでしょう。
本作は、
”人生を棒に振ってもいい” 岩井澤監督の情熱に全振り。
理由の有る情熱なんて情熱じゃないと言わんばかり、
背景の物語も、キャラの思いも、極力省いてます。
 
無酸素運動のように、息苦しい程の熱量は伝わりますが、
反面、
 アフォリズム的なセリフは唐突に感じます。
 複数のランナーが登場しますが、群像劇として成立するほどの尺は足らず。
そういうことは原作↓読んでくれと、割り切った、

覚悟の映像と音楽を愛でました。
 
 
レゼ編は、満席が落ち着いてからでいいかと、本作を優先しました。
土曜の夜の回でも、本作もミッチミチでしたが。
予告編の作画もさる事ながら、髭男↓を聴きに行こうと決めました。

ギターが格好良くて、(こんなの弾けるの努力と才能の賜物かな)
足音や心拍をイメージさせるリズムが前面に来るかと、
てっきり予想してましたが、
アニソンらしさ全面に押し出したパワーコード系。だそうです。(後述)
 

監督の事は良く知らず、
音楽」すら未見。 

純度100%の手弁当系ですね。
  
ロトスコープって、こういう↓。 

本作の紹介↓は、世界陸上を中継するTBSのお世話になりました。

 
ポニーキャニオンの寺田悠輔Pが企画して、
 100m走をアニメで描くには、岩井澤健治に託そうと。
 さらに陸上繋がりでTBSへ打診。 
  キャスティングに始まり、
  陸上競技監修、音響、実写はガッツリとコミット。
 配給はアトミックエース武次茜Pにも入ってもらい、フランスまで行く
と想像した。(手弁当発では、東京2025に間に合わないだろう)
 
予告編観る限り、
中抜きして、末端の下請けがAIで作画なんてことは99%無い、と安心していた。
通路より前目の中央寄りに着席。 
客層は若者中心、カップルも見掛ける。ほぼ満席は意外。
  
 
 
 
兎に角、圧倒されました。
夏の空は、岩井澤監督独特のブルーでした。
アニメの画のことは良く分からず、色使いのセンスにも驚いて、
凄いとしか言えないのですが、
クールで精巧なだけでない、荒くて強い線も再現。
情熱だけでないセンス。オシャレ。
 
絵柄で、何故か谷口ジロー連想。
神々の山嶺」と似てるかとも。(後述)観てて酸欠しそうだし。

海外セールスもイケる。いい座組。
 
音響全般、映像に負けじと気合い入りまくりでした。
劇伴も、やはりギターが格好良くて(後述)、痺れました。
打楽器より弦楽器とは、本当に意外。
 
ライバル物語としては、
宣伝文句の昭和のようなフォーマットはミスリードで、
今どき全日本クラスが、才能vs努力 の二項対立な訳がない。
正しい残酷に観客を誘導すべきかと。(後述)
私は後から、陸上競技の知識を得ました。  
 
 
作画のことは、これ以上、文字では蛇足。
観て頂くとして。
それ以外に補足したい事、も少し語りたい。
 1.ギターがカッコいい
 2.ストーリーの構造
 2.1.縦軸はライバル物語
 2.2.横軸は、小学生&高校生&社会人の3パート毎
  
ストーリーに触れるとなると、どうしてもネタバレします。
もちろん原作既読なら、問題ありません。
 私は鑑賞後、
 陸上競技の短距離走について、
 為末大からレクチャー受けましたが、
 最初から、その知識有った方が楽しめたかも。
  
 
 
1.ギターがカッコいい
 タッタッタという足音を表すのは予想出来ますが、
 シンプルで力強く、それでいてカッコいいギターが前面に来るとは。
 アニメロックらしさ全開でした。

 速い。努力と才能両方が揃ってプロ。
 楽しけりゃいいんだけれど、指痛くて、すぐ挫折。
 
 偶然でなく、
 ギターストロークを、両足の回転に見立て、
 疾走感を表現している。
 シンプルに、ストレートに、パワーコード全開。

 専門的な解説↑は置いておいても、
 力強く、メロディに乗せて、観客を連れていってくれる。
 
 原作の理解度高く、
 TVシリーズでもイケるよう、制作間に合わせたのでしょうね。
 というか、作画が最後まで、締切ギリギリまで時間掛けてそう。 
 
 
 劇伴もギターがカッコいい。

 やっぱり、ギターの人↓でした。納得です。
 JASCAC 堤 博明さんインタビュー|Creators’ View

作曲家としてギタリスト目線のアプローチをできることが、
自分の強みの一つだと感じています。
ギターのかっこいい部分だけでなく、ダサい部分もわかる。
例えばビブラートのニュアンス一つに至るまで、
ギターを弾いていない人よりもシビアにジャッジできます。
逆にギタリストとしても、
楽曲の構成を理解したうえで、
これまでプレイヤーとして培ってきたテクニックを発揮して、
より楽曲の一部として機能するギターを弾ける。
そういう相乗効果があるのかなと思います。

 プロに成る人は夢中↓。努力は凡。

当時所属していた野球部内で空前のギターブームが起きて、
部室にギターを持ち込むほどのめり込みました。
あまりの熱中ぶりに三者面談で先生から心配されたほどです(笑)。
どちらかと言えば努力が苦手なタイプでしたが、
ギターだけは夢中になって練習しましたし、
練習することをつらいと思いませんでした。

 マインドが本作にフィット↓して、選ばれるべく得ればれたのか。

特に心に残っているのが
「今弾いている音が人生最後の音だと思え」という言葉を頂いたことです。
鈴木先生に出会わなかったら今の自分はなかったと思いますし、
音楽面の「育ての親」だと思って、とても深く感謝しています。

 本作に、師匠は出てきませんが、
 大成するかどうかの巡り合わせは大きいと痛感。
 良きコーチに出会えないなら、居ない方がマシ(参考2.1.)でもあり。
 大谷翔平と佐々木朗希が同じコーチという例もあります。
 
 
 
2.ストーリーの構造
 主人公の競技者としてのキャリアを縦軸に、
 小学生、高校生、社会人のそれぞれの時代で人間模様を横展開。
 
 複数のアスリートの群像劇として、
  ライバル物語に収めず、
   絶対王者、

   ピークを過ぎても追う者、
   怪我でキャリアを断念する選手。など、
  競技への取り組みの違いを描き、
  サブストーリーだらけの長期連載も可能ですけれど、、
 
 少なくとも映画の尺に、それだけの余裕は無い。
 構造は残しつつも、
 ”人生を10秒に賭けてしまう” 姿そのものを描くことに特化。
 その割り切りは、大成功と圧倒されてました。
 
 
 2.1.縦軸はライバル物語 
   誤:才能vs努力 ↓
   正:早熟vs晩成 
  PRでは、手っ取り早い説明で処理されてしまった。
  劇中、随所に、
  ”早熟vs晩成” を匂わすセリフは印象的なのですが、、
  あれじゃ、何のことやら。

  最初、武井壮↓に解説願う。 

  少年時代、技術に図抜けて勝ててしまうとしても、
  晩成型に、いずれフィジカルで追い抜かれ、最適化する技術も備わる。 

  早熟型は、中学時代に沢山の期待を喰らい、消耗してしまう。
  劇中、
   主人公の中学時代は描かれませんが、
   大変そう。
   高校進学の頃には、陸上が嫌いになりかけている。
 
   子供から大人へ、骨格は変わるので、
   そのまま同じで最適化出来ない。
   ”フォーム変わった” と指摘されるのは当然である。

   ライバルは、
   フィジカルの伸び代が大きく、
   充分な筋力、強度を獲得するまで、技術的な最適化に至らず。
   中学時代までは独学。
   器の大きさを悟られず、無茶な走り方を指摘される。
   実はセリフとはウラハラに、怪我の再発を避け、成長期は自重出来ていた。
 
  雨のシーンで遂に、環境のハンデすら味方にゴールデンクロス
  決定的な、成長曲線の逆転を見せつける。 

  社会人に成ってからは、残酷な明暗。
  物語は、最後に一花と、競技人生のロウソクの炎を燃やす。 
 
  練習量増して、どうなるという問題じゃない。

当時の僕は伸び盛りだった。中学三年生のときの一〇〇メートルのタイムは、
ルイスが同じ年齢のときの記録を上回っていた。
ルイスのようになるという夢は本当にかなうと信じてひたすら練習に励んだ。
しかし、その後高校に入ってその夢がどのように遠ざかっていったかは前述したとおりである。

  中学生日本一でチヤホヤされる記録でも。

ずっとあとになって、僕はルイスの走る姿を生で見たことがある。  
そのときの率直な感想は、
「自分の延長線上にルイスがいる気がまったくしない」というものだった。
僕がいくらがんばっても、ルイスにはなれない。
僕の努力の延長線上とルイスの存在する世界は、まったく異なるところにあると感じた。

  単に才能の違いだけでなく、方向性が重要。

世の中には、自分の努力次第で手の届く範囲がある。
その一方で、どんなに努力しても及ばない、手の届かない範囲がある。
努力することで進める方向というのは、自分の能力に見合った方向なのだ。

  ビジョンの無いダメ経営も世の中には在るけれど、
  為末大は、時間を掛けて、自分の経営で成果を出した。
  自己認知能力の高さの賜物。
 
  フィジカルな才能という現実の壁が、最初に在り。
  次に、戦略的な賢さが成果を分けるという現実を知る。
  劇中のトガシ君の競技人生、そう捨てたもんじゃないけど。
  単純化を避けて、辛い時期を財産に変えてと願ってしまった。
 
  
昔、
毒親育ちの30代男性に出会った。
 彼は、母親の助言を信じた。
 母親は受験の経験も無く、勝利体験も無い。
 彼は厄介な存在に従順だった。 
 いやいや、
  母親に愛が有るか無いか関係ないよ。

 彼は、
 大学受験で10以上受け全部落ちた経験を語ってくれた。
 学部も受験科目もバラバラで、存分に努力した。
 全部落ちて、母親から”努力が足りない” と言われた。

 ただの根性論じゃ、流石に無謀だよ。   
  努力の問題じゃなくて、戦略の欠如。
  受かる為の最適化が無い。対策が無い。
  せめて受験科目が同じとこ受けて、要リソースの選択と集中。
  学力(地力)を伸ばす勉強と、受験に勝つ勉強は別だもの。
 
失敗は、間違った人をコーチに選んだことだよ。
過干渉で不勉強で、能力不足な指導者を信じたこと。
師を誤るほど不幸なことはない。
 
 
  トガシ君の中学時代は辛そう。
  その分、良い指導者に成ってね。
  コミュニケーションや言語化の能力は高いんだろうから。

  そのクラスまで行けるのも一握りで、
  早めに諦めなかった分、逆にセカンドキャリアは考えんと。

  劇中描かれないので、主人公の人生を想像してしまう。 
  キャリアのスタートからエンドまで、熱風の物語。
  敢えて、ドラマも説明も排除して、
  100mに向き合うことだけに選択と集中。 
  概ね高評価で、良かったね。
 
 
 2.2.横軸は、小学生&高校生&社会人の3パート毎
  小学生編は、「風の又三郎」。徒競走に目覚める。
  高校生編は、「がんばれ!ベアーズ」。情熱を取り戻す。
  社会人編は、
   もはやロートルと化しても、情熱は、まだ完全には消えてない。
   晴れ舞台で、かつてのライバルにもう一度だけ挑む。
   「最後のひと葉」に近いかな。  
   「神々の山脈」思い出してしまった。是非アニメで!(実写は未見)

  登山家の辞め時は、もっと深刻だった。忘れてた。 

  尺の都合も有るとは言え、
  群像劇にしなかったのはエラい。
  製作委員会方式でも、余計な思惑は混じらない。
  マーケットが広がったのは、やはり大きいかも。
 
 
予習してから観にゆく方が、正解のコースだったかも。 
先に、レゼ編だったかも。
 
 
 
千里の道も一歩から。にしてもハードル高い。

事実は変わらないけど、
解釈は簡単に、書き換わるからな。未来の結果次第で。 
 
 
 
2025.09.22 20:30現在
 20MAまで戻って来るか、行ってしまうか。
 半導体強し。
 もうちょっと様子見を続けて、過ちは素直に認めたい。

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