フランスらしい明るい娯楽作「モネと時間旅行」三年掛かった脚本も褒め(映像だけでなく)


外出のついでに観ておく機会を得て、ヒューマントラスト有楽町へ。


高めの年齢層で、私が観た回も、ほぼ満席。
(新宿武蔵野館のご回復を祈念します)
 
 
《 鑑賞 》
 
 
モネ没後100年記念に、まこと相応しい映像。
印象派らしい明るさで、市民に開かれた娯楽作。
その上、
 入り組んだ三世代リレー形式の群像劇を、
 滑らかに切り替える工夫を随所に魅せて、
 フランスらしい恋愛模様まで乗せる。
バランス調整が難しい脚本を、3年掛けて納得ゆく仕上がりに育てた。
妥協せず、よく耐えたものですね。
オシャレで文化の底力も感じさせる企画。
 
私は映像に浸るだけで充分な多幸感味わいました。
絵画に造詣深ければ、
元ネタと映像を見比べる楽しみ、もっと味わえたでしょうね。。
 
懸念点は、
やはり複雑な構成。見事ですが、、
 入り組んで、かつ展開はシームレスに速い。
 時代背景も、日本人に説明不要で全て承知は大変と思う。
 そこに、三世代✕三角関係以上の人数 主要人物も多い。 
少なくとも、私は全て追いきれたとは言えない。
娯楽作なのに、脳にはハイカロリー消費でした。
 
予習しとけば、も少し楽だったか。
うーん、、私は事前に網羅出来る自信は無い。

 
順番に、整理してみる。 
※たぶん、ギリネタバレ回避。と思う。
 
 1.復習
 1.1.モネと地理
 1.2.時系列 印象派展と世界大戦
 2.現代と過去の工夫 映像と音楽はギャップ
 3.シームレスなトランジション 脚本の段階から
 4.三世代のフランス式二股 群像劇の工夫
 5.明るい近代市民の文化 直近鑑賞と比べて
 5.1.「エルミタージュ幻想」太陽の光セロトニン
 5.2.「赤線地帯」近代的人間讃歌
 5.3.「さとこはいつも」フランスの監督の恋愛観
 

ところで、
本作に関連した、以下の2点については、
私、ノーアイディアで、
  
 ・写真の発明が、絵画を自由にし、新しい表現を生んだ’美しき時代’を、
  生成AIが登場した現代に、どう、なぞらえるのか?
 
 ・モネの本物の前で、鑑賞よりもSNSへの投稿が優先とは!
  現代人は承認欲求中毒。

自分が楽しめる範囲で楽しめばいい。それ以上の事は言えません。
  
  
 
1.復習
 本作に登場する美術史関連、把握しないと、
 内容の解像度上がりません。
 一旦、羅列します。
  
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 印象家が生まれる1870年代は、鉄道の普及によりパリは世界一の都市へ。

林道郎は、印象派が美術界に波紋を投げかける時代には、
近代化や鉄道網の整備を基盤にして
パリは最も華やかな都市になっていたことを次のように記している。
「世紀の首都」という言い方があるが、
いわゆる印象派が美術界に波紋を投げかけるようになる1870年代には、
産業革命の進行とともに西欧全体が急速な「近代化」を進め、
鉄道網の発達などを受けて、
ロンドンそしてパリが世界でもっとも先端的で華やかな都市であった。
1870年から年にかけて起こった普仏戦争およびパリ・コミューン闘争によって甚大な被害を被ったにもかかわらず、
パリは、その「首都」としての発展をやめず、むしろ戦後になって、
印象派からアール・ヌーヴォー、そしてアール・デコの時代へとつらなる、
いわゆる「ベル・エポック」の時代を迎えるほど
存在感を増したのであった。
ロンドンを凌いで、少なくとも文化的な活気と成熟という意味で、
名実ともに「首都」として認知されるようになった。

 
 貴族から都市部の中産階級に、更にアメリカへとマーケットが広がった時代。
 印象派はその新しい需要に応えた。

フックは、印象派の画家たちが顧客の気分をよくさせるような要素を
あからさまに売り込んでいるように見えるとまで記しているが、
同時にフックもまた、明るく明快、際立って陽気、
といった批評を肯定的に捉えていると言えよう。
このことは他の論者の多くが印象派の作品には
明るい幸福な主題が多いと評していることに通底する。
印象派の画家たちが都市生活や自然を主題にしながら
明るく美しく幸せそうな場面を数多く描いていることを
これらの記述から改めて確認することができると言えよう。

 
 アートがポピュラリティも獲得して、
 絵画でも、太陽の光や自然は精神に良い。

印象派の絵画がこれほど長く人気を保ちえたのは、
見る者の精神を高揚させ、
気持ちを高める力があったからだということは周知の事実だ。
世界中の医者や歯医者が、
光に満ちたモネやルノワールの絵の複製画を病院の待合室に飾っている。
木漏れ日には不安を和らげる力があるのだ。
当初、印象派に敵意を抱く人が多かったにもかかわらず、
驚いたことに、
この抗うつ剤的な力についてはそもそもの初めから認識されていた。
批評家のアルマン・シルヴェストルが、1873年に書いている。
「この新人たちに成功をもたらすだろうものは、
見たところ、彼らの絵が際だって陽気な調子で描かれていることだ。

 
 当時のモノクロ写真は精密でも、これは出来なかっただろう。
 明るい色彩や、刻々と移ろいゆく微妙な空気感は、捉えられない。
 チューブ式絵の具の発明が与える影響は大きい。

溶いたものを、
乾燥しない状態で保存する柔らかい金属でできた容器である。
1830年代に発明され、
画家たちが戸外で制作を行なうことに大きく貢献した。
この発明により、
画家は既に出来上がった絵の具を購入することが可能になった。
油彩による風景画を野外の外光の下で制作することを意味するとされる
プレネールという言葉があるが、
19世紀にチューブ入り絵の具の普及と相俟って、
野外での油彩スケッチやタブローの制作が行なわれるようになったと
指摘されている。

 
 ついでに、 
 劇中の人物が、環境保全に取り組むのは、明らかにモネを意識している。

印象派の画家が社会に対して働きかけを行なったと
見ることができる事例がある。
ジヴェルニーの地でモネは多くの作品を描いたが、
ある時期、工場建設によって生ずる汚染を
未然に防ぐことになる行動を取った。

 
 印象派誕生の背景を把握したら、
 山田五郎先生に登場願う。
印象派の由来 写真家ナダールのスタジオで第1回印象派展の開催。 

 精巧な写実は写真に役割を譲る時代背景に、手法が転換。
  印象派=雰囲気重視
  そこまで、ルロアは印象派をディスってない!
  (実は、老害には分かるまいと言っている)
  劇中は定説通りのルロアの扱い。
 
モネの人生 

 本作は、史実とは違う。
 愛妻との物語は悲劇的。
 が、やっぱり二股気味。

オランジュリー美術館 

 コンコルド広場側に、太陽光を大切にする設計。
 みんな自撮りするよね。

ル・アーヴル モネの出身地で「日の出」の場所

 今はパリから電車で2時間くらい。

ル・アーヴル(フランス語: Le Havre)は、
フランス北西部の大西洋に臨む港湾に位置する都市。
セーヌ川右岸の河口にあたり、
ルーアンを首都とするノルマンディー地域圏
セーヌ=マリティーム県に属する。
港湾の規模はマルセイユに次ぎ、
大西洋岸ではフランス第1位の規模である。
 
-中略
第二次世界大戦中、
ノルマンディー上陸作戦から続く
アストニア作戦の艦砲射撃と空爆で破壊され、
戦後「鉄筋コンクリートの巨匠」とも呼ばれた建築家
オーギュスト・ペレによって再建された。

ジヴェルニー モネの庭

 モネは郊外の自然を愛し、晩年を過ごす。
 劇中の撮影でも、絵画そのまま。

パリからおよそ70kmの距離、
セーヌ川とエプト川が合流するヴェルノンの東5kmに位置する。
ノルマン・ヴェクサン地方の入口にあたる。
 
-中略
庭園には、季節ごとにモネが愛した色とりどりの花が咲く。
家の内部には数多くのモネの作品や、
モネが傾倒していた葛飾北斎、歌川広重、喜多川歌麿などの
浮世絵コレクションが展示されている。

 
 1.1.モネと地理
  ノルマンディーからパリまでの地理は把握。
   セーヌの運河に加えて、鉄道の延伸。
   都市と郊外で開発の差。
  モネが生きた時代が分かる。
 
  そして、やはり、
  ノルマンディーという地は、劇中でも重要な意味を持つ。
 
 
 1.2.時系列 印象派展と世界大戦
  1874年 第1回印象派展
  1914年 第一世界大戦勃発
  1939年 第二次世界大戦勃発
  1944年 ノルマンディー上陸作戦
  
  過去パートのヒロイン、アデルが生まれた頃、第1回目の展覧会。
  第一次大戦で、若き画家は兵役に取られてしまう。
  アデルの故郷ノルマンディーは、第二次大戦で戦禍の最中。
  家族の離散を余儀なくされ、生家は閉鎖。
  現在に至る。
 
  目まぐるしく時空は入れ替わる本作では、
  印象派誕生以降のフランスの状況も、
  把握しておかないと追いつかない。
 
 
 見失っても仕方無いし、構わないとも思うのですが、
 この映画に興味持つフランスの客には、
 鑑賞中、把握出来る前提で作られてるようです。
 
 
 
2.現代と過去の工夫 映像と音楽はギャップ
 冒頭から、現代と過去のスイッチは頻繁で、人物も多そう。
 忙しくて、入り組んだ映画だと、ことわりが入る。
  
 衣装や美術で、一目瞭然とは言え、
 過去から現在への繋ぎ目は、ワザとシームレス。(後述)
 それでも、映像と音楽で区別出来るよう工夫されている。 
 
 過去パートの映像に、監督は独特の処理を施した。

  デジタルの質感にならないよう、
  モノクロ映像に着色するような手法で処理。
  敢えて、粗めの質感を残した。
  シーン毎に色彩調整は綿密に行った。
 確かに、
 映像を眺めているだけで、モトは取れます。
 
 
 劇伴も、過去と現代では意図的に分けていて、
 電子音楽に、 今は現代なんだ と我に返ります。 
 とは言え、
 ドビュッシーくらいは、流石に私でも分かりますが、
 ボーっと過去パートの映像に見惚れてるときに、
 急に転換されて、ついてゆくのやっとでした。
 細かい違いまで、気が回りません。
 
 
  
3.シームレスなトランジション 脚本の段階から
 ドアの開閉、手紙を読むなど、視線の移動で場面が転換して、
 次のシーンでは別の時空に飛んでいる。
 シームレスなトランジション(つなぎ)を常に工夫している。

マッチカットを利用したトランジション

 没頭してる時間が途切れない。
 反面やり過ぎは、観る方が疲れる。
 
 3年掛けた脚本は、相当に工夫してるの分かりますが、
 乱発じゃないかと、最初思いました。
 それでも、途中で説得されて、
  まあ、パリのロケだから、出来ることだなぁ。
 
 百年余り前の街並みを、そのまま再現出来るのだもの、
 京都だって、無理そう。
 作り手には、滑らかな繋ぎであるべき理由が有る。
 2度の大戦を挟んでも、家系図は繋がっているのだし。
 
 直接的にモネの生涯を映画化することも出来たのに、
 敢えて、多層的に繋がる物語の娯楽作にした。
 監督の心意気を感じました。
 
 
   
4.三世代のフランス式二股 群像劇の工夫
 それにしても、毎度必ず、恋愛模様は二股なのか?
 フランス人の恋愛観は分かりません。

 三角関係好きだよねえ。

 トリュフォーとか、思い出すけど。
 
 セドリック・クラピッシュ監督は、
 パリの街並みや、面倒くさい恋愛をいつも描くらしい。

 元恋人が好きらしい。
 
 確かに史実のモネも、愛妻と死別した後、三角関係っぽいけど。
 わざわざ、その要素を全て足さなくても。。
 監督は律儀に面倒くさい。
 
 脚本のバランス調整は困難を極めたと想像される。
 
 
  
5.明るい近代市民の文化 直近鑑賞と比べて
 フランスでは当たり前かもしれない、けれど、
 個人的体験ながら、
 日本から観て、本作の個性際立つ。 
 
 
 5.1.「エルミタージュ幻想」太陽の光セロトニン
  こちら、ペテルスブルク建都100年記念企画。

  百年余りの時空を超えて、絢爛豪華な絵画の数々。
  しかし、
  自国の文化に対する誇りと、日照時間の違い。

  雨ばかりのロンドンでも、こうは行かない。

 
 5.2.「赤線地帯」近代的人間讃歌
  都会に出て、娼婦に身を落として、、

  が、そこはフランス近代の自立した女性。
  (1870年代の価値観かどうか不明)
  後悔なく、恥じることなく堂々と、
  日本のように湿度高くない。
  晴れやかに生きる。
  
  そんな生き様が、
  印象派の、本作の鑑賞後感を決定付けている。
   
 
 5.3.「さとこはいつも」フランスの監督の恋愛観
  三世代で、二股も発生しますが、、

  そこまで、面倒くさくない。
  分かり易く、パートを区切るし。

  フランスの恋愛が面倒くさ過ぎ。
  本作、二股にする必然性は無く、時流に抗っても監督の趣向。
  そんな事しなければ、脚本はもっと早く上がりそう。
  笑っちゃう。
  けど、これぞフランス映画。
  ラスト晴れやかに倫理はどうでも、結論を出す。
  真骨頂でしょうね。
  
 
 
やはり、印象派といえば。

 
 
 
2026.09.29 23:00現在
 20MAを割ってから、反発中。
 月末の数字は悪くなさそうですけれど、
 材料は気にしても分かりません。
 上昇は限定的で、-2σタッチを想定。

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